ネットで長らく人気の
Dr林のこころと脳の相談室が好きで
折にふれて精神科Q&Aを読んでいたりするのだが、
Amazonで林先生の名前で検索したところ、上記のKindle本が安くなっていたので購入してみた。
タイトルの通り、精神科Q&Aの中から役に立つもの(あるいは役立たないが面白いもの)をセレクトした本。
掲載は現在2700件以上あるうちの55件だが、それでもなかなかの読み応えがあった
(新書一冊以上の分量はあったと思う)。
電子書籍オリジナルの本で、レイアウトはWebサイトに似たつくり。
本書中に取り上げきれていない関連Q&Aについても、URLから直接Webサイトに飛んで確認できるのは
電子書籍ならではの利点といえる
(林先生自身、「まえがき」において本書を電子書籍として刊行できることの意義について述べている)。
単にWebサイトからの引用にとどまらず、各Q&Aの末尾に林先生の書き下ろし一言コメントが載っている。
あまたの「病名」が溢れかえる、林先生の言うところの「サイコバブル社会」に警鐘を鳴らす真剣なものもあれば
単なる恋愛相談としか思えないQ&Aに対する冷ややかなコメントなど、読み物として面白いつくりになっている。
その「読み物として面白い」という感想に関連するが、
林先生は常々「
興味本位は無関心に優る」という言葉を口にする。
このQ&Aのような病気に関するコンテンツに
病気でない人間が興味本位で(あえていえば面白がって)接することに
嫌悪感を覚える人は一定数いるという。
しかし、興味本位であってもそれに触れることは理解のきっかけになりうるが、
興味本位を否定して抹殺・隠蔽すれば、
対象を知ることすらないのだから、「無関心になる」ということすらできなくなる。
その一点において、興味本位は無関心に優るというのである。
この点には納得できるし、またそういった人がこのQ&Aを読んでいるのだろう。
興味本位で読むことと、間違った理解や偏見を広めることはまったく別物なのだから、
興味本位であることはそれ自体害にならない。
「うつ病は甘え」は完全な間違いだが、
単なる甘えや別の病気でしかないものが「(新型)うつ病」としてまかり通っていることに対する林先生の問題意識は
この本からもやはりうかがい知れる。
うつ病に限らず、病名の氾濫によって
本当に病気に苦しむ人が周囲から疑いの目を向けられてしまう風潮を少しでも拭い去ることができるのなら、
やはり「興味本位」はきわめて有用な武器たりうる。
【今日のまとめ】
分かりやすい文体も好き。というわけで。
- 2014/07/19(土) 21:15:04|
- 本
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