
この写真を見て、「オレが食事に来た」と考える人はまずいないだろう。
だが、これは食事処の庭である。
およそ4年ぶりに訪れた、新潟・五泉市の「亀徳泉」だ。
開店の少し前に到着したもののまったく先客がおらず、
少し不安になり営業情報を確認しようとスマートフォンを手にするも、4年前と変わらず電波は圏外。
仕方なくそのまま待っていると、無事定刻に開店した。
女将さんに丁寧に案内され、和室に着席した。

店内でリピートされている独特のリズムの曲が気になったが、メニューと一緒に歌詞カードが置かれていた。
今年の初頭に生まれた「亀徳泉音頭」だそうだ。
川のせせらぎをBGMにくつろげるのがこの亀徳泉のひとつの魅力であり、この音頭が延々と流れることには賛否両論もあろうが、
お店の人々が満足しているのならオレが文句を言う筋合いはない。

瓶に入れて出される付近の鍾乳洞の湧き水を飲みながら待っていると、十割蕎麦と天ぷらの盛り合わせが提供された。
本当は鯉の洗いも食べたいところだが、二人前からの提供なので諦めた。
相変わらずうまい、の一言に尽きる。
野菜の甘みを感じられるサクサクの天ぷらに、蕎麦の香りをふんだんに感じられる十割蕎麦。
これを食べに峠道まで来る価値は十二分にある。
途中で店を訪れた二人組が、「鰻はありますか」と女将に尋ね、「うちは鯉しかない」と言われてそのまま帰ってしまった。
鰻はなくともこれだけうまい蕎麦を食べられるのに、実にもったいない。

そして、極め付けは鍾乳洞の水を使ったこのアイスコーヒーだ。
コーヒーの風味はさることながら、上質な酒を味わっているかのような芳醇さが口内に広がり渡る。
実のところ、蕎麦よりもこのコーヒーを再び飲みたくて再訪したのだが、その甲斐はあった。
「亀徳泉音頭」の歌詞カードの裏はその音頭の誕生について書かれた地元の新聞記事だった。
その記事によれば、先代の女将が今年亡くなったそうだ。
4年前に来たときにとても良くしてくれたのをいまも覚えている。
そのおもてなしの心は当代の女将も変わらずで、蕎麦とコーヒーを食べただけのオレを外まで見送ってくれた。
恐縮してしまいつつも、また訪れたいと思える。
電波の届かない静かな峠道で、最高の蕎麦とコーヒー、そして鯉料理を味わえるという稀有な空間。
そんな亀徳泉に、みなさんもぜひ訪れてみてほしい。
【今日のまとめ】
風呂はもう少し上級者になってから。というわけで。
- 2023/07/22(土) 23:55:54|
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