「国旗損壊罪」を新設する刑法の改正案が、今国会に提出されるという。
現行の刑法には「外国国章損壊罪」(第92条)の規定はあるが、
日本の国旗、いわゆる「日の丸」を損壊する罪については規定がない。
現状、「日の丸」を損壊しても、器物損壊罪(第261条)に該当するだけだ。
提出案における「国旗損壊罪」の法定刑は「2年以下の懲役又は20万円以下の罰金」である。
これは、外国国章損壊罪の法定刑と同一であり、
器物損壊罪の法定刑「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」よりも軽いので、これ自体は妥当だろう。
もっとも、そうであるならば、
器物損壊罪の範囲で処罰可能な類型について、わざわざ罪を新設する妥当性があるかは疑問だ。
「外国旗を損壊する罪はあるのに自国旗についてはそれがない」というのは一見妥当に思える。
しかし、外国国章損壊罪は「国交に関する罪」であり、
その保護法益は、国際法上の義務ないし国際法秩序により保護されるべき外国の利益である。
自国旗を損壊する行為については少なくとも国際法秩序の問題とはならないので、
外国国章損壊罪と今回の国旗損壊罪をパラレルに考えることはいささか無理がある。
もちろん、国旗損壊罪の成立を求める社会的風潮が高まっているなどの事情があれば、成立の正当性は十分にあるであろう。
しかし、単なる議員立法でこれを正当化させることは、難しいだろうと思う。
【今日のまとめ】
短答のネタは増えるが。というわけで。
- 2021/01/27(水) 21:12:49|
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