きょうは涼しかった。
日中こそ気温は30度を超えたが、終始涼しげな風が吹いており、おまけに湿度も低く、数字ほどの暑さは感じられなかった。
まだ8月も半ばだが、さながら秋を思い起こさせる陽気だったといえる。
この陽気でふと思い出したのが、
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬるという藤原敏行の和歌だ。
立秋が訪れ、「秋になった」と言われても視覚的にははっきりわからないが、風の音で秋を実感する、という内容は、
まさにきょうオレが感じたそのものの感情だ。
この和歌は中学や高校の教科書に載っているレベルのもので、おそらくほとんどの人間が知っている。
オレも文学の知識はまったくないが、当時特に暗記した覚えもないのにいまでも暗唱できた。
ありふれた感情を決まったリズムの歌に閉じ込め、それが千年経っても親しまれているというのはすごいことだ。
こうした、教科書に載っているレベルの和歌が、現代人の感情をも的確に表現しているというケースは他にもある。
東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ
という柿本人麻呂の歌は、オールナイトのクラブイベントが終わった早朝に会場の外に出た時の心象風景そのものだ。
もちろん万葉集の時代にオールナイトのクラブイベントなどない(歌会はあったかもしれない)が、
早朝に外に出たときのあのエモーショナルな光景は、昔もいまも変わらないということなのだろう。
ナショナリズム的な話をするつもりはないし、日本以外にも似たような文化は当然あるのだと思うが、
このように誰でも知っている和歌で感情を共有できるということが日本独特の優れた文化であることに疑いはない。
よくわからないクールジャパンよりも、こうした文化を大事にする方が無駄な消耗は少ないとオレは思う。
【今日のまとめ】
百人一首は苦手だ。
というわけで。
- 2018/08/17(金) 22:22:57|
- 日記
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0