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ヘイト言論はそもそも「表現」ではない

ある小説が原作となったアニメーション作品の制作が中止となったというニュースを目にした。
作者が過去にSNSでヘイト発言を行っていたことが発端となったらしい。
アニメーションの制作が中止となったのみならず、原作小説も出荷停止となったという。

それだけだと異常なことに感じられるが、どうやら、原作の小説自体にもヘイトを匂わせる設定や描写があったそうだ。
よく「作者の人格は作品には関係ない」という主張を目にするし、オレもある程度まではそれに賛同するが、
その主張は、作品それ自体の内容が何らかの犯罪を構成していたり、攻撃性を有してしまっている場合には妥当しないということには注意を要する。
「『石に泳ぐ魚』事件」という憲法判例が存在するが、あれが好例だ。

この手の出来事があると、決まって、「表現の自由」が主張される。
だが、表現の自由はあくまでも憲法上の権利だ。
憲法上の権利であるということは、表現の自由が保障されるのは、それが国家と個人との関係においてであるということを意味する。
そのため、私企業が、(おそらく事前の契約条項に基づき)自社で出版された本を出荷停止にしても、表現の自由の問題には通常ならないということに注意を要する。

仮に憲法が私人間にも適用されるという構成を採った場合でも、今回の事案において「表現の自由」を主張することは困難だと思われる。
なぜなら、ヘイト言論はそもそも(表現の自由により保護される)「表現」ではないと考える余地が大きいからだ。
凶悪な表現であっても「表現」には含まれるが、それが特定の国家や人種に対する攻撃的な発言である場合には、「表現」に該当する可能性は限りなく小さくなる。
このことは、憲法14条1項後段が、差別的取扱いが絶対的に禁止される類型として、真っ先に「人種」を挙げている事実からも裏付けられる。

これら複数の点から、今回のアニメーションが制作中止となり、小説が出荷停止となったことはやむを得ないと思われる。
また、こうした事情から、他の描写(例えば性的なものなど)を原因として類似の措置が採られるという可能性も考えにくい。
あまりにも事情が異なるからだ。

だが、この国では、ヘイトの有する重大性があまり強く認識されていないゆえ、それらが同列に語られてしまう。
この認識の誤りが結果的に新たな類似の事例を生んでしまうことは大いにあり得、それには気をつけなければならない。

【今日のまとめ】
ツイ消しが捗る。


というわけで。
  1. 2018/06/07(木) 22:58:00|
  2. 法学
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