「口約束でも契約は成立する」という話をよく聞く。
それは実際にその通りで、書面が一切なくとも、互いの意思表示さえ合致すれば契約はその時点で成立する。
署名押印はおろか、紙切れさえ必要ないということだ。
そう言うと、口約束だけで契約の効力を簡単に主張できるように思えたり、
それこそ「口約束で充分ではないか」と思うかもしれない。
しかし、当然のことながら、
契約の効力が争いになった場合、訴訟上で、その口約束が本当に存在したかどうかを証拠により証明しなくてはいけない。
その証拠はもちろん録音でもいいし証人でもいいのだが、
それは裁判所に「口約束は存在した」との心象を抱かせることができるレベルの証拠でないといけないから、実際には厳しい。
そもそも、録音するほど準備がいいなら、
相手が頑なにそれを拒むのでない限り、はじめから書面を作成するのが普通だろう。
また、相手方が書面作成を頑なに拒む状況下で契約が成立したとすれば、
本当に相手方の真意で意思表示がなされたのか自体が問題となってくる。
そして、口約束の存在を証明できなかった場合、
当然ながら、その口約束は存在しなかったのと同じに扱われる
(厳密には「存在しているかどうか分からない」という状態が確定する)ので、契約の効力を主張できないことになる。
つまり、「口約束でも契約は成立する」という一般論は正しいが、
実際にその主張がスムーズに認められるかというと厳しいということだ。
その意味では、やはり署名押印のある書面を作成するのが最も手っ取り早い
(そうすればそもそも争い自体が起きないし、もし起きても証拠が存在する)し、
それが最も合理的だということだ。
「何でも書面にする」という慣習はつい忌み嫌われたり揶揄の対象になるが、
かといって、それに勝る方法はないのである。
【今日のまとめ】
とはいえ、友人とのギターの貸し借りで書面を作るのもどうかとは思うが。というわけで。
- 2016/06/16(木) 21:55:31|
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