京都の仁和寺に勤めていた調理スタッフが同寺に慰謝料を請求し、それが認められたというニュースを目にした。
そのニュースの内容自体は部外者がどうこう言うことではないが、
「仁和寺」と聞くと、やはり思い出すのは「徒然草」だ。
「仁和寺にある法師」で始まる第52段は、教科書にも載っている有名な話だ。
「先達はあらまほしきことなり」ということだが、
要するに、「聖地巡礼の時は、事前に情報を調べてから行かないと見るべきものを見落とし、損をする」というストーリーであり、
アニメファンにとっては非常に耳の痛い話である。
この次の第53段も仁和寺が舞台で、「これも仁和寺の法師」で始まる。
こちらは、「酒のノリで鼎を被ったら抜けなくなり、周囲の人が必死で引き抜いたら耳や鼻がもげた」
というグロテスクな話なので、さすがに教科書には載っていない。
このエピソードには「先達は~」のような結びの言葉はないが、
「酒で羽目を外すと痛い目にあう」という教訓を伝えようとしていることは明白だ。
オレがこの話を知ったのは、高校生の頃にたまたまブックオフで買った、故橋本武先生の「解説 徒然草」という本がきっかけだ
(オレが買った日栄社の物は絶版だが、今はイラスト抜きでちくま学芸文庫から出ているようだ)。
徒然草は古文の問題で出ることも多かったので、訳が付いているのを気に入って買ったのだが、
ウィットに富んだ解説と現代語訳(的を射た意訳が多い)が読み物としても非常に面白く、今でも折に触れて読み返す。
当時のオレは橋本武先生のことを全く知らなかったのだが、
大学生になってから「銀の匙」の授業に絡めた本によって先生のことを知り(そして、先生はオレの尊敬する数少ない日本人の一人となった)、
道理で面白いわけだと関心したものだ。
同じシリーズで百人一首の解説本もあり、これは大学生になってから購入したのだが、
当時付き合っていた女性が百人一首のエキスパートだったこともあり、
話を合わせたくて、その本を使って必死に暗記したのもいい思い出だ。
この本も2014年に文庫化されているようで、先生の功績が今になって再評価されているのだろう。
この二冊はオレのバイブルと言ってよく、それが文庫化されたことで他人に薦めやすくなったのは嬉しい限りだ。
【今日のまとめ】
原書のイラストも良かったので、それがないのは残念だが。というわけで。
- 2016/04/13(水) 23:00:27|
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