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キムラヤスヒロ(鳩)公式ブログ

オウンリスクが許されない社会

ある県が、遭難した登山者が救助中に滑落して遺族から訴えられたことを契機として、
3200メートル以上の救援には出向かないことを表明したとのニュースを目にした。
オレはそのことを合理的な判断だと感じたのだが、
このニュースに対して、「一人の馬鹿な登山者のせいで迷惑を被った」という感想を抱く人々がいるようだ。
思えば、数年前にスノーボーダーがスキー場のコース外で遭難した際も、
救助の実費を請求され、それを支払った遭難者に対して、「馬鹿」だとか「迷惑」という批判があった。
だが、そもそも、そうした「迷惑」は生じているのだろうか。
そして、遭難者は「馬鹿」なのだろうか。

クライマーやバックカントリーを行う人々は、常に「オウンリスク」の考え方を前提に山に入っていく。
オウンリスクというのは、端的に言えば「自己責任」で、
自分の行動が場合によっては死につながる可能性があるというリスクを引き受けた上で行動するということだ。
この考え方が浸透している社会、
すなわち、死や大怪我のリスクを覚悟して行動するという選択を尊重する社会では、救助を断ることも許される。
自分でリスクを選択した以上、それは当然のことだからだ。
もちろん、救助の要請があればレスキューは可能な限りで行われるし、
その対価として実費が支払われる。
「オウンリスク」の考え方は社会によって承認されているから、「迷惑だ」との批判も生じにくい。

しかし、日本では、有無を言わせずレスキュー隊が訪れ、それを断ることはできず、後から実費を請求される。
そして、「遭難するなら初めから行くな、迷惑だ」と社会から批判を受ける。
遭難するリスクのある場所に行っては行けないのであればレスキューの存在意義がないとも思われるが、
そうした批判は、事実として存在する。

これは、日本では「オウンリスク」の考え方が浸透していないことを意味する。
「オウンリスク」が認められない社会では、死や大怪我をするリスクを覚悟して行動するということがそもそも承認されない。
その結果、そのような行動をすること自体が、「馬鹿」で「迷惑」だと受け取られることになる。
そして、死や大怪我をするリスクを覚悟して行動することは、あたかも自殺と同じかのように捉えられる。
自殺を放置することはできないから、有無を言わせず救助が行われる。
そして、「何で自殺同然の行為をした人間を助ける必要があるのか、迷惑だ」と批判されるのだ。

「死んでも仕方ない」というリスクを背負うことを認めず、人命は有無を言わせず助ける。
その考え方が一概に間違っているとはいえない。
だが、クライマーやバックカントリーの愛好家からすれば、そうした社会は極めてやりにくいだろう。
オウンリスクを背負えることが、競技を続ける前提となっているからで、
それが許されない社会で競技を続けることは、常に批判を浴び続けることになる。

日本に「オウンリスク」の考え方が浸透していないのは、
島国であり、古来から外敵による致命的な攻撃を受けることが少なかったことに関係しているとオレは思う。
そうした社会では、リスクを背負うことを承認し、そうした人々を切り捨てることをしなくても、ほとんど全員を救うことができたのだ。
外敵との争いで忙しくなった結果、守れる命が最低限に抑えられ、
自ら死を覚悟した人間は遠慮なく放置していくという過程がそこでは存在しない。

リスクを引き受けなければ、危険にさらされることは少なくなる。
だが、危険と引き換えでなければ手に入れることができないものは、絶対に得ることができなくなる。
それによって社会が失うものは大きいとオレは思う。

【今日のまとめ】
富士山は眺めるもの。


というわけで。
  1. 2016/01/28(木) 20:57:19|
  2. 日記
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