自分が競馬を見始めた頃から一線で活躍していた藤田騎手が引退した。
それらしきリークもあるにはあったが
事前にJRAに知らせることもなく、その日の騎乗を終えていきなり引退するというそのやり方は
彼が少し前に出した本に書いたやり方そのまま。
勝利数こそ減ったが、いい馬に乗ればまだまだ勝てる腕はある。
それを示しつつ引退したのは彼らしいと思う。
彼が直筆のメッセージで明かした引退の理由。
それは大雑把にいえば、「エージェント(騎乗依頼仲介者)制のもたらした害によって
競馬に対するモチベーションが失われた」というものだ。
これについて、「お前だってエージェントを雇っていたじゃないか。勝てなくなったからそう言うんだろ」と思う人もいるだろうし
それも一理ある考え方だ。
実際、武豊によれば、藤田は一ヶ月ほど前から引退を決意しつつも他方で悩んでいたというし
周囲からそう見られることについては自覚もあったのかもしれない。
しかし、藤田が不満を持ったのは、エージェント制そのものというよりも
一部の大物エージェントが有力騎手を囲い込み、その有力騎手たちでいい馬を回し合うという現状だ。
有力騎手(いわゆる「◯◯軍団」)がいい馬を回し合い、上位騎手は皆100-130勝ほどの勝利数をバランスよく分かち合う。
そんな状況がここ数年顕著になってきている。
そこに彼は疑問を感じたのだ。
「軍団」の騎手たちに実力があるのは確かだし、そういう騎手にいい馬が集まるのは馬券的にはありがたいかもしれない。
しかし、競馬をスポーツ競技として見た場合に、それが面白いか。興奮するか。
以前よりも、それによって競馬が楽しくなったか。
そう思う競馬ファンは僕の周囲で見たことがないし、全体として見たところで、おそらく一握りもいないだろう。
上手い騎手はいても、かつての武豊のようなスター騎手はいない。
そして、この現状が続く限り、今後も現れない。
つまらなくなったかはともかく、競馬は面白くはなっていない。
それは公然の事実だ。
競馬それ自体の人気が低下しているのはGIレースの入場人員数ひとつを見ても明らかで
その状況下では、面白くなっていないだけでも充分マイナスなのだ。
藤田はファンを大事にする騎手だった。
引退発表と同時に、ファンと交流できるカフェを札幌に開くことを発表していることからも
彼がその姿勢をいまだに大事にしていることがはっきりとわかる。
我々競馬ファンは、その気になれば藤田とまたいつでも会える。
しかし、その場所は競馬場ではなくなった。
それは、藤田の「現在のJRAはファンを大事にしていない」という
何よりの意思表示であるように思える。
【今日のまとめ】
スエヒロコマンダーが地味に印象深い。というわけで。
- 2015/09/08(火) 21:08:12|
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