怠惰と汗と現実と

キムラヤスヒロ(鳩)公式ブログ

とりあえず憲法を改正してみる

憲法改正の話題がいよいよ本格的になり、
総理大臣は、2020年までに憲法改正に乗り出すという明確な時期までも打ち出した。

「憲法改正に賛成か反対か」という、そこら中で行われている問いかけには何の意味もない。
問題は「改正するか否か」ではなく「どう改正するか」にあり、改正する中身が重要だからだ。
人権が侵害される改正案であれば反対するに決まっているし、より優れた改正案であれば賛成するに決まっている。
そこにまったく触れずに「憲法改正に賛成か反対か」と訊かれても答えようがないし、
その解答が世論誘導にでも使われるのではないかという疑念さえ抱いてしまう。

そうした理屈の突き詰めはともかく、オレは憲法をすぐに改正すべきだと思う。
いま実際に、現実が憲法に合っていないからだ。

「憲法は国家権力を拘束して国民の権利を守る法である」という立憲主義の基本に立ち返って考えたとき、
現実が憲法に合っていない現状は、立憲主義が通用しているとはとてもいえない。
憲法が国家を拘束できていないからだ。
そうした状態を長期間放置すれば立憲主義が形骸化し、憲法が死文化しかねないから、これは危険なことだ。
直ちに現状に合った憲法改正を行い、憲法が国家を拘束できている状態を作り出す必要がある。
だが、デモなどで「立憲主義」を掲げる団体は、むしろ護憲に傾いていて、オレはそれが不思議でならない。
繰り返すが、国家権力を現実に拘束できていない憲法を護ることは、むしろ立憲主義を形骸化させてしまう。

オレは、「とりあえず憲法を改正してみる」というスタンスがあって構わないと考えている。
改正して、その憲法のもとで暮らしてみて、おかしいと思ったらまた改正すればいい。
改正した憲法は最低何年間運用しなければいけないというルールはないので、
理論上は、改正した次の総選挙の際にまた国民投票を行い、すぐに再改正することも可能である
(発議要件もあり、税金投入の問題もあるから、現実にそのようなことはないだろうが)。
どうも、「70年使ってきたから、今度の憲法も70年くらい使わなければいけない」というような無意識の誤りがあり、
それが不必要に改正論議を慎重にさせているようにしかオレには思えない。

もうおわかりだろうが、このような無意識の誤りこそ、まさに無駄な消耗なのである。

【今日のまとめ】
試験の論点っぽいところは全部条文に埋め込んで潰してほしい。


というわけで。
  1. 2017/05/07(日) 20:37:38|
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漏洩

ローのA教授が漏洩。
…お粗末様でした。

これはもちろん完全にアウトな行為だし、同情の余地もない
(はじめこの話を聞いた時、せいぜい論点を教えた程度だろうと思っていたが
実際に解かせて添削までしていたと聞いて椅子から転げ落ちた。
一番気の毒なのは隣で受けていた受験生である。
隣の人間が開始の合図と同時に答案をいきなり書き始め、さぞプレッシャーを受けただろう)。

とはいえ、「ロースクールの教授が考査委員として本試験の問題を作成し、かつ考査委員である間も講義を受け持つ」
というシステム自体にも問題はある。
今回のように完全にネタバレしてしまうケースは論外としても
自分で問題を作って、その結果「ここは絶対に出ない」と分かっている論点があるとして
そこを普段の講義で熱心に教えることができるだろうかという話だ。

むろん熱心に教えられる先生が多いのであろうが、それでも、ロボットではないのだから
同じ熱心でも、出るところと出ないところでやはり教え方に濃淡は出ると思うのである。

そのくらいは仕方ないだろう、と言われればその通りなのだが
考査委員の授業を受けられるロースクール生とそうでないロースクール生、
もっと言えば、ロースクールの講義自体を受けていない予備試験組という差がある以上
突き詰めるのであれば、この点はやはり排除すべきものであると思われる。

とはいえ、「考査委員の間は講義ができない」なんてことになれば誰も引き受けないだろうし
完全に実務家だけが作問に関わるシステムに切り替えるのも容易ではないだろう。
結局、誰もが納得のいくシステムになるのは無理強いでしかなく
いつものように「法曹養成制度自体の問題」というマクロな視点に問題がすり替えられて決着することになる。

今回は教えた側も教わった側もやり口があからさますぎただけであって
こういうケースはきっと以前にもあったし、今後もあるのだろうと思う。
上述のように「教え方の濃淡」でいえば、当事者がそれと気付かないうちに漏洩が行われたケースもあるだろう
(もっとも、それを「漏洩」と言っていいかどうかはわからないが)。

旧試験では漏洩などなかった、という意見も見受けられるが
旧試験の問題文を実際に見たことのある人であれば
たとえ漏洩したところで、「論点が的中した」程度にしか見られなかったであろうことが分かるはずだ。

いずれにしても、私は来年合格しないとそろそろまずいなと思うのであった。

【今日のまとめ】
どちらかと言うと出題趣旨を漏洩してほしい。


というわけで。
  1. 2015/09/10(木) 20:20:35|
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もしペンネームが著作物だったら




ペンネームに著作物性が認められるのか、という話。

そもそも著作権(著作者の権利)というのは、対象が著作物でなければ発生しない。
著作権というのはあくまで創設的な権利(民法上の権利のような自明の理ではなく、一定の目的のために政策的に作られた権利)なので、
契約でそれ以外のものに著作権を付与することも当然許されない。

「著作物」というのは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と定義される。

では、ペンネームが「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえるかというと
あくまでペンネームは創作活動上用いる「名前」であるにすぎず、そこに創作的表現は認められないだろう。
仮に創作的表現といえるとしても、ありふれた表現には著作物性が認められないから、
少なくとも「ミノ☆タロー」という誰でも思いつきそうなペンネーム(悪意はないです)には著作物性が認められないことになる。

もし、仮にペンネームに著作物性を認めるとすれば
たまたま同じペンネームを使っている人が著作権侵害者としてペンネームの使用差止めや損害賠償の請求を受けることになる。
それどころか、このブログに「ミノ☆タロー」という文字を書いただけで
僕も著作権の侵害者になってしまう。
それはどう考えてもおかしい
(この「どう考えてもおかしい」という社会常識的な価値判断は
法律ではけっこう重要。めちゃくちゃ頭いい最高裁の判事だって「酷」とか「妥当でない」という理由でバンバン判決してる)。
だいたい、著作物かどうかは意志に関係なく決まるので
もし生じるなら、Twitterのハンドルネームだって著作物になってしまうし…
そうなったら人の名前を本名でしか呼べません。ディスコミュニケーションここに極まれり。Facebook優勝。

ということで、「ミノ☆タロー」というペンネームに著作権は発生しない。

そうすると、考えられるのは
・ミノ☆タロー先生が勘違いしている
(本当は後述する単なる合意だけど、ミノ☆タロー先生がそれを「著作権の譲渡」だと思っている)
・コナミが勘違いしている
(コナミはペンネームに著作権が生じると思っていて、ミノ☆タロー先生とそういう無効な契約を締結してしまった)
のどちらか。

前提として、「ミノ☆タローというペンネームをコナミのものとする」という契約であれば
それは私法上の合意として問題なく成立する。
使っちゃいけないという約束を破れば、当然損害賠償も発生する。

しかし、前述の通りペンネームに著作権は生じないので
もしミノ☆タロー先生とコナミの契約書に「ミノ☆タローというペンネームの著作権はコナミに帰属する」と書かれていたら
これは無効に…なるのかどうかが微妙なライン。
もちろん著作権は生じないけれど、当事者間においては
上記の私法上の合意として読み替えても差し支えがなさそうだ。
この判断は裁判所にお願いするしかないところ
(こういう「本来無効な文言を有効な文言として読み替える」タイプの判決は結構存在する)だが
本件では別にミノ☆タローさんとコナミは揉めておらず
ミノ☆タローさんは箕星太朗さんとして活動していく意思を自ら明確にしているので
訴訟が起きることはなく、結論は夢の中である。

「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」という定義、
これだけで結構悩みに片がついてしまうことも多いので、覚えておくと良いのでは。

【今日のまとめ】
非親告罪化はやっぱり怖い。


というわけで。
  1. 2015/03/16(月) 22:56:04|
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戦時刑事特別法

とある本(といっても別に隠すようなものではなく、以前にも紹介した古畑種基「今だから話そう」)を読んでいたら、
「戦時住居侵入罪」という言葉が出てきた。
何だそれはと思って検索すると、どうやら戦時刑事特別法という臨時法が戦中に存在したらしい。

第十七条 戦時ニ際シ刑法第百三十条ノ罪ヲ犯シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
二 (略)

刑法第130条は住居侵入罪(建造物侵入罪)を規定しているから、この条文がその「戦時住居侵入罪」に当たることになる。
通常の住居侵入罪は三年以下の懲役又は50円以下の罰金(当時。現行は10万円以下)だから、その加重ぶりは大きい。
戦時においてとはいえなかなかハードコアな法律である。

Wikiの同法の頁を見ると、
戦後日本の刑事訴訟法において刑事訴訟判決における有罪理由の簡易な記述や
検察官面前調書の特信性は戦時刑事特別法に由来するとされている。
」とある。
戦時であることを理由とした手続きの簡素化がそのまま戦後も慣行として続いているという趣旨だろう。
まあ、日本の刑事司法は一般市民レベルでも問題視されるほどブラックな面を抱えているのは事実だ。

ちなみに上記の古畑本の中で戦時住居侵入罪で起訴された男は強姦犯でもあるのだが
その点の事情についてはこのようなエントリを見付けた。
かいつまんで言えば、当時存在した姦通罪(刑法183条)で処罰するには夫の告訴が必要なのだが、
なにせ戦時中だから、夫は出征で家にいないのが普通。
そのため、告訴不要の戦時住居侵入罪で処罰した、ということであるらしい。
いわゆる「法政策上の問題」というやつだ。

基本的に現行法しか使わない試験に向けて勉強しているので、
こうした過去の法令についての勉強はどうしてもなおざりになるが
沿革を学ぶことは大事だ。
そういうきっかけに出会うという意味でも、やっぱり本はある程度読みたい。

【今日のまとめ】
法令関係のデータベース、頭がこんがらがります。


というわけで。
  1. 2014/07/21(月) 22:31:26|
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解体作業中の旧軍艦「日向」は刑法第260条の「艦船」にあたらないとした裁判例

艦これwikiの日向のページを見ていたら、
実艦エピソードの項に「大破着底していた戦後に泥棒に入られた」という旨の話が載っていた。
俺の嫁に何をする!
その事件にかかる事件番号も併記されていたので、
ロー生の特権として判例検索システムから当該裁判例を覗いてみた。

広島高等裁判所昭和28年(う)第196号窃盗未遂器物毀棄被告事件、
昭和28年9月9日判決である。

こちら(裁判所web)にも掲載されているが、"軍艦「C」"となっている

そうすると、判示事項に
解体作業中の旧軍艦『日向』は刑法第260条の艦船にあたるか」と書いてある。

日向

つまるところこういう事件。
一度大破着底していた日向は解体作業のために業者によって再浮揚させられていた。
ところが、泥棒が何かしらの金属を盗みたくて日向に侵入。
ボイラー室にあった金属製のバルブを外そうとしたらなかなか外れなかったので
ハンマーで破壊して根こそぎ持って行こうとしたら、破壊した部分から浸水し、再び日向は着底してしまった。
そして泥棒も何も盗まずに逃走。
俺の嫁に何をする!

こんなことで刑法判例(最高裁でないので正確には裁判例だけど、
刑事事件の判決は事実上高裁の裁判例が先例として判例的に機能していることが多い)になっていた日向さん…
解体されていようが何だろうが日向さんは艦船だろ!いい加減にしろ!と言いたいところだが
被告人としては無罪になりたいわけだから、「大破着底した船は艦船じゃないから無罪だ!」と主張することになる。

裁判所は結局、
「ところで刑法第二六○条にいわゆる艦船であるがためには現に自力又は他力による航行能力を有するものであることを要するものと解すべきものであるから、右のように六年間も海底に沈没して錆腐し且つその三分の二を解体撤去されたとえ水上に浮いていたとはいえ、完全に航行能力を喪失し一部の船骸を残すに過ぎないものであるからもとは軍艦であつても同条にいわゆる艦船には当らないものと解するを相当とする。」と判断(太字筆者)。
でも、
「然らば右は単なる器物又はスクラツプの塊りに過ぎないものと見るべきや否やというに、右は解体途上にあつたもので本件犯行当時は既に三分の二を解撤されたとはいえ、なお下甲板以下の巨大なる原型構造を存し内部に人の出入し得べき各室を有して毎日約七、八○名の作業員がこれに出入して解撤作業に従事していたもので浮べる解体工場どもいゝ得べく且つ地上ではないとしても一定の場所に繋留されていたものであるから右は家屋類似の工作物であつて同条にいわゆる建造物に当るものと解するのを相当とする。そして被告人等はこれを沈没せしむる意思はなかつたとしてもその一部を故意に破壊したものであることは明らかであるから、本件は建造物損壊を以て論ずるのを相当とする。」
として、建造物損壊罪を成立させた
(罪数としては窃盗未遂罪とセットなので、より法定刑の重いそちらの刑により懲役2年)のだった。
建造物扱いの日向さん(´;ω;`)



米軍撮影による、戦後に大破着底した日向の映像(もちろん上述の浮揚作業の前)。
呉大空襲により痛々しい姿になっているが、主砲や艦橋などの勇ましい構造物は健在である。
呉で朽ち果てるまで戦った彼女の名は今日もこうして語り継がれる。

【今日のまとめ】
改二になるという噂は何だったのか。

というわけで。
  1. 2014/03/03(月) 22:43:38|
  2. 法学
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